ヒアルロン酸注入とボツリヌストキシン注射は、非外科的な美容医療の中でも特にポピュラーな選択肢です。どちらも顔の印象を整えるために用いられますが、適用目的や効果の仕組み、持続期間が異なるため、目指す仕上がりや部位に応じて使い分けることが大切です。ここでは基礎知識と選び方のポイントを分かりやすく解説します。なお、実際の施術は医師などの専門家によるカウンセリングを経て判断してください。
基礎知識
ヒアルロン酸注入(HA注入)
– 仕組みと目的
– ヒアルロン酸は体内にもともと存在する保水性の高い物質です。注入することで皮膚の体積を補い、主に凹みや輪郭の不足を改善します。しわを埋めたり、唇のボリュームを出したり、頬のこじんまりした印象を改善したりするのに適しています。
– 効果の特徴
– 即時的に効果が実感されることが多く、腫れ・内出血などのダウンタイムは比較的短い場合が多いです。効果は使用する製品や部位、個人差にもよりますが、約半年から1年以上持つこともあります(製品の種類や個人差で異なります)。
– 使用部位の例
– 顔の凹み(頬・法令線・鼻根のくぼみなど)、輪郭の修正、唇のボリュームアップ、目の下のクマ周辺の影の緩和など。
ボツリヌストキシン注射(ボトックス注射)
– 仕組みと目的
– ボツリヌストキシンは筋肉の動きを一時的に弱める作用を持ち、表情筋の過度な動きを抑えることで「動くしわ」を減らします。主に眉間の縦じわ、目尻の笑いじわ、額の横じわなどの改善に用いられます。
– 効果の特徴
– 効果は2~7日程度で徐々に現れ、最大効果は約2週間前後で安定します。持続期間は個人差がありますが、約3~6カ月程度が目安です。
– 使用部位の例
– 眉間の縦じわ、目尻の横じわ、額の水平じわ、下顎の表情筋によるラインなど。
選び方のポイント
目的と部位を明確にする
– 動く皺を減らしたい場合はボツリヌストキシン注射が適していることが多いです。表情による動きが少なく、静的な凹みや輪郭の不足を整えたい場合はヒアルロン酸注入が適しています。
– 複数の部位を同時に改善したい場合は、組み合わせでの治療も有効です。治療計画は医師と相談して決めるのがよいでしょう。
肌質・年齢・希望の仕上がりを考慮する
– 乾燥肌や薄い皮膚、弾力の低下が進んでいる場合は、HA注入でボリュームを補い、静的なラインを目立たなくする方法が適していることがあります。
– 若年層で動く皺の改善を中心に考える場合は、ボツリヌストキシン注射が基本となることが多いです。
– 仕上がりの好み(自然さ、ふくらみの強さ、表情の柔らかさ)も重要な要素です。
ダウンタイムとリスクを理解する
– HA注入は腫れや内出血が出やすい場合がありますが、多くは数日で落ち着きます。血管損傷などの重大な合併症は稀ですが、適切な技術と経験を持つ医師による施術が重要です。
– ボツリヌストキシン注射は頭痛や眼瞼下垂、額の DI (方向性) の変化などの副作用が起こる可能性があります。筋肉の過剰弛緩による表情の不自然さを避けるためにも、経験豊富な専門家に依頼することが重要です。
費用と持続期間のバランスを考える
– どちらも部位・使用製品・注入量・地域により費用が変動します。長期的なコストだけでなく、通院頻度やメンテナンスの必要性も考慮してください。
– 自分のライフスタイルや行事の予定、メンテナンスの手間などを含め、現実的なプランを立てると良いでしょう。
医療機関と専門家の選び方
– 資格と経験値を確認する:形成外科、美容外科、皮膚科などの専門領域での経験がある医師を選ぶと安心です。
– カウンセリングを重視する:不安な点を丁寧に説明してくれ、適切な治療計画を提案してくれるかをチェックします。
– クリニックの衛生・アフターケア体制も大切:施術後のフォローアップが整っているか、異常時の対応が明確かを確認します。
実践的な比較ポイントのチェックリスト
– 目指す仕上がりは「ふくらみを出して若々しく見せたい」か「表情ジワを抑えたい」か。
– 部位と肌質、年齢、過去の治療歴を医師に伝える。
– 適用部位ごとに最適な製品・手法の提案を受ける。
– ダウンタイム、リスク、費用の説明を十分に受ける。
– 可能なら複数の医師からセカンドオピニオンを得る。
アフターケアと注意点
– 注入部位を強く刺激する行為や摩擦を避け、腫れや内出血が起きやすい部位には数日間の配慮をする。
– アルコールや血行を促進する活動は、腫れや内出血を悪化させることがあるため、施術直後は控えめに。
– 壮大な効果を期待せず、医師の指示に従い定期的なフォローアップを受ける。
結び
ヒアルロン酸注入とボツリヌストキシン注射は、それぞれ異なる仕組みと適用領域を持つ、強力な非外科的美容手段です。自分の悩みや理想の仕上がり、ライフスタイルを踏まえ、信頼できる専門家と十分にカウンセリングを行い、適切な組み合わせと治療計画を選ぶことが大切です。施術を検討する際は、事前の質問リストを用意して、納得のいく判断をしてください。なお、妊娠中・授乳中の方、既往歴のある方、現在服用中の薬やサプリメントがある方は、施術前に必ず医師へ伝えるようにしましょう。